医療現場にあるおもしろ豆知識

医療現場にあるおもしろ豆知識

医療の現場にまつわる、ちょっとした“豆知識”を集めてみました。とくに医療事務などではじめて働く方にオススメです。 一般にはあまり知られていないことや、少し知っておくと役に立つことなども取り上げていますので、参考としていただければ幸いです。

医療現場の専門用語編

医療現場ではなぜドイツ語が多いのか?

日本では、明治時代に西洋医学を導入する際、当時の医学先進国であったドイツから教師を招きました。来日した医学者であるエルヴィン・フォン・ベルツ(Erwin von Bälz)やユリウス・カール・スクリバ(Julius Karl Scriba)などは、東京帝国大学(現在の東京大学)の医学部で教鞭をとり、大勢の医師を養成しました。そのため、多くの医学用語は、ドイツ語がそのまま使用されることになったのです。
ドイツ語由来で、現在でも一般的に使用されている医学用語には、例えば次のようなものがあります。
  • カルテ」(karte)、英語では“card”の意味となります。
     ちなみに、英語で「カルテ」のことは、「メディカルレコード」(medical record)と呼ばれます。
  • ウィルス」(virus、英語:“ヴァイラス”と発音)
  • アレルギー」(allergie、英語:“アレジー”と発音)
また、医学用語から一般化した用語として、例えば「エネルギー」(energie、英語:“エナジー”と発音)など、医療現場に限らず、私達の身近にある言葉も意外に多くあります。

病院内で使われる“隠語”って・・・?

世の中には、いわゆる「業界用語」が使われている職場もありますが、医療業界、特に病院内においても、独特な用語(隠語)が使われています。
例をあげると・・・
  • この患者さんのアネムネは?」……………………この患者さんの既往症は?
  • 明日、先生がムンテラをします」…………………明日、先生が病態(病状)説明をします
  • あのクランケ、来週エントでよかったね」………あの患者さん、来週退院でよかったね
  • 今からエッセンに行ってきます」…………………今から食事休憩に行ってきます
などなど、普通ではちょっと理解できない会話ですね。
ところで、どうしてこのような隠語が医療業界で使われてきたのでしょうか? それは、患者さんやその家族の方に対して、プライバシーに関することや、不安・心配といった心情に配慮したためといわれています。
なお、最初のテーマでもご紹介したとおり、これらの隠語にも、ドイツ語が起源となっているものが多くみられます。日本の医療現場の歴史において、ドイツからの影響が非常に強かったことを物語る一例といえるでしょう。

仏教伝来と医学用語の関係とは?

漢字の読み方(音読みの場合)には、「漢音」と「呉音」がありますが、医学用語の場合、「呉音」の読み方が多く使われていることをご存知でしょうか。
例えば、食物を飲み込むことを指す「 」という言葉は、一般的には「えん」と読まれる場合が多いのですが、医学用語としては、「障害」のように、「えん」と読まれます。
また、「」や「」などは、それぞれ「こうくう」・「ふくくう」と読み、「腔」の漢字に「こう」 という読み方は通常使用しません。
その他、「」(か)や「熱剤」(ねつざい)なども、それぞれ「がい」や「かい」とは読みません。
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このように、医学用語の場合は、「呉音」が使われていることが非常に多いのです。
その理由として、日本においては、古代の医術が、仏教と同時期に伝来し、さらに、中世までは医師と僧侶は極めて近い関係にあって、仏教で多く使用されていた「呉音」の影響を強く受けたためと考えられています。
ちなみに、仏教用語である「」(だつ)や「」(けちえん)などの読み方も、「呉音」の例です。

医療専門職の仕事編

「医師の応召義務」とは?

医師法は、医師の資格や業務内容、果たすべき義務などを規定していますが、その第19条に、「医師の応召(おうしょう)義務」ということが定められています。
具体的には、「診療に従事する医師は、診察治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定されています。
さらに、厚生労働省の通達(昭和30年、当時は厚生省)では、この「正当な事由」について、「正当な事由がある場合とは、医師の不在または病気等により、事実上診療が不可能な場合に限られるのであって、患者の再三の求めにもかかわらず、単に疲労の程度をもって診療を拒絶することは、医師法第19条違反を構成する」と示されています。
このように、医師は、事実上不可能な場合を除き、原則として、いかなる場合であっても診察に応じる義務があるわけで、その社会的責任は大変重いものです。
なお、この「応召義務」に違反した場合の罰則は、医師法には直接規定されていませんが、国民の生命や健康を守る職業として、極めて高い意識が求められているといってよいでしょう。

MRI検査の専門職は誰?

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CT検査」と「MRI検査」について、聞いたことのある方は多いでしょう。あるいは、受診した経験のある人もおられることと思いま す。
CT検査とは、人体の360度方向からX線を当てて、身体を透過してきたX線を検出器で測定し、コンピュータ処理をして身体の断面図を撮影する検査です。
一方、MRI検査とは、X線を使わず、磁力を利用した画像検査です。まず、身体に強い磁場を与えて、体内にある水素原子を整列させます。そこに電波を送ることによって生まれた信号を機器がとらえ、画像化する仕組みです。
これらの検査を担当する専門職として、「診療放射線技師」と「臨床検査技師」があります。
このうち、CT検査については、X線を使用するため、検査を実施できるのは、放射線による検査が認められている診療放射線技師に限られ、臨床検査技師は行うことができません。
しかし、MRI検査の方は、診療放射線技師と臨床検査技師、どちらも行うことができます。
まず、診療放射線技師が実施できる根拠としては、診療放射線技師法において規定されている「放射線」の中に、MRI検査で使用される磁力線(電磁波)が含まれていることにあります。よって、MRI検査は、診療放射線技師の業務範囲となります。
また、臨床検査技師が実施できる根拠としては、臨床検査技師等に関する法律において、MRI検査が 「生理学的検査」に分類されるため、臨床検査技師の業務範囲ともなるわけです。
このように、医療の現場において、MRI検査は、診療放射線技師と臨床検査技師がそれぞれ行っているのですが、実際のところ、どちらの職種が適しているのかは、一概にはいえません。
結局は、検査担当者個々の技能や経験が一番のポイント、ということのようですね。

薬剤師のルーツは?

薬の製造や処方については、古来より世界各地で色々な職種、例えば、医師・僧侶・祈祷師・占い師などから、魔術師や錬金術師といった、かなり怪しげな人々に至るまで、様々な職業の人がかかわっていました。
よって、薬剤師の起源についても諸説あり、はっきりしたことはわかっていません。
ただし、既に9世紀前半には、アラビアにおいて、薬剤師が薬の専門家として認められており、独立した薬局を開設したことなどが記録されています。
その後、現代の薬剤師とほぼ同様の形態になったのは、1240年、当時の神聖ローマ帝国皇帝、フリードリヒ2世が、「医薬分業」に関する法律を制定したことが始まりとされています。
ところで、何故彼はこのような法律をつくったのでしょうか?
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実は、自らが暗殺(毒殺)されることを恐れ、①診断を行って処方せんを発行する者(医師)と、②発行された処方せんに基づいて薬を調合する者(薬剤師)を完全に分離することにより、毒薬が紛れ込んでいないかをチェックさせるためだったのです。
ちょっと意外なルーツですが、その後、この医薬分業制度は、ヨーロッパを中心にして世界各国に広がり、現在では、薬剤師も多くの国で活躍しています。

医療に関する制度・経営編

「ジェネリック医薬品」はいいことづくめ?

最近、テレビや新聞などで、「ジェネリック医薬品」が盛んに宣伝されています。ところで、この「ジェネリック医薬品」とはそもそも何なのか、皆さんご存知でしょうか?
ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、有効性と安全性が十分に確認された新薬(先発医薬品)の特許が切れた後、他の製薬会社から厚生労働省の承認を得て発売される、医療用医薬品のことをいいます。元になった先発医薬品よりも開発コストが格段に低くなるため、価格も新薬の2~7割程度に抑えることができます。
ジェネリック医薬品が普及することのメリットとしては、いくつかのことがあげられます。
まず、新薬と比べて、ほとんど効果が変わらないにもかかわらず、価格が非常に安いため、何よりも患者にとって、経済的な負担が大きく軽減される点があります。
また、国(厚生労働省)としても、医療費の大幅な抑制が期待できることから、ジェネリック医薬品の普及に力を入れています。
しかし、このようなメリットの一方で、リスクも指摘されています。
その問題点のひとつとして、ジェネリック医薬品の承認試験には、有効性の試験はあっても、新薬ほど厳格な安全性の試験がないことがあげられます。そのため、安全性のデータが相対的に少ないなど、新薬と比較して情報量が大幅に不足しているのです。
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また、有効性などについても、「新薬と全く同じ」ということが保証されているわけではなく、「統計学的にみて、新薬と差がない」ということです。よって、新薬よりも有効性などが低い場合、逆に副作用が強くなる場合など、新薬とは有効性などが異なる可能性が、ゼロとはいえません。
このように、ジェネリック医薬品は、実際のところ「100%いいことづくめ」というわけではありませんので、その点はよく認識しておく必要があります。
最終的には、選択をする私達の自己責任ということになるでしょう。

「DTC広告」って何?

よく新聞の記事広告などで、特定の病気の一般的な症例、予防方法や治療方法、さらに医療機関で受診することを勧める内容などが書かれているのを目にされることがあると思います。例えば、爪の水虫や糖尿病・うつ病など、色々な疾患が紹介されています。
このような広告は、「DTC(Direct to Consumer)広告」(一般消費者向け直接広告)と呼ばれています。では、なぜこのような広告が掲載されるのでしょうか?
実は、日本では医療用医薬品(医療機関で医師の診断と処方に基づいて使用される医薬品)については、薬事法という法律により、商品名を広告することが禁じられています。
そのため、各製薬会社は、直接的に自社の製品を宣伝することができないので、患者に対して病気に対する情報をわかりやすく提供し、病気である、またはその疑いがあることを自覚してもらうことなどによって、医療機関で受診してもらうように誘導しているわけです。
医療業界は、国民の生命や健康、さらには医療費という国費が複雑に絡み合っていることから、他の業界よりも政府の規制が強くなりがちとされますが、そのことを物語る一例といえるでしょう。

「医療モール」とは?

病気の方が医療機関を利用する際、病院の場合には、内科・小児科・整形外科・胃腸科・心療内科など、 多種類の診療科を1ヵ所で受診することができます。
それに対して、診療所・医院・クリニックなどの場合、それぞれの機関が完全に独立した存在であるため、必ずしも距離的に近接しているとは限らず、ひとつひとつが散在していることも少なくありません。
医療モール」とは、このような、従来の診療所などが抱えていた欠点をカバーして、専門の違う複数の 診療所や調剤薬局などが、ひとつの建物に入居する形態の複合施設をいいます。
このような形態をとることで、医師の側にとっては、集客の苦労を低減し、認知度も高めることができ、さらには、
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専門の違う他の医師との連携がとりやすくなるといったメリットがあります。また、開業のための投資費用も、2~3割程度低く抑えることができるといわれています。
一方、患者側にとっても、診療所ごとにあちこち移動せず、一ヵ所で診療が受けられるという利点があります。また、医療機関以外にも、例えば銀行や郵便局、その他ショッピングができる施設などが併設されていれば、利便性はなお高まります。
このような、地域医療の向上につながる動きがますます活発化することで、医療機関・調剤薬局・患者、さらには医療関係以外の事業者など、それぞれにとってプラスになることを期待したいものですね。
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