インフルエンザの流行の仕組みと予防

インフルエンザ流行の仕組みと予防

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毎年流行するメカニズム

 
少々医学的なお話をします。
我々の体は、病気のもとになるウイルスや細菌の違い(抗原)を正確に認識して、それに見合った抗体を体の中で作りだすことができます。 この抗体が抗原とぴったりとくっ付いて抗原を中和し、感染から身を守り、発病しても軽く済むことがあるわけです。 いわゆる免疫反応の一種です。抗原を鍵穴、抗体を鍵に例えて、その仕組みが説明されることがあります。

<毎年流行するのはA型>

変異
毎年流行を繰り返すA型インフルエンザウイルスの表面には、HA、NAといったタンパク質でできた突起物があり、同じA型であっても、微妙に突起物の性質(抗原)が頻繁に変わり、ワクチン接種によりつくられた抗体では対応できなくなってしまいます。 これによりインフルエンザは毎年流行することになります。一方で、B型・C型については、A型のような小変異を繰り返さず、一度作られた抗体が機能し続けるため、毎年の流行にはなりません。

<新型の誕生>

もともとは動物にしか感染しなかったウイルスが人体に入り、遺伝子組み換えなどにより突然変異を起こして、新型のウイルスが誕生する場合があります。 この場合、誰もが新種に対応できる抗体をもっていないため、大規模な感染(パンデミック)を引き起こすことがあります。
変異

<恐ろしい高病原性鳥インフルエンザの変異>

自宅待機の備え 過去に大流行したスペインインフルエンザ(1918年)、アジアインフルエンザ(1957年)、香港インフルエンザ(1968年)、ソ連インフルエンザ(1977年)はいずれもA型インフルエンザの変異により大流行を招きましたが、 ウイルスの毒性は弱く、当時もタミフル(1996年開発)のような特効薬があれば、大流行にはならなかったと考えられます。 一方で、今後、毒性が強いと言われている高病原性鳥インフルエンザウイルスが変異すると、深刻なパンデミックを引き起こすことが想定されています。それに備えて、極力外出を控えるため、2週間分程度の食料を備蓄することが推奨されています。
 
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3つの感染経路を理解する

 
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飛沫感染

飛沫感染
インフルエンザの感染経路の大半が、この飛沫(ひまつ)感染です。
感染した人のくしゃみや咳には、たくさんのウイルスが含まれていて、感染者との距離が1.5メートル程度以内であれば、ウイルスを直接吸い込み、または鼻や目などの粘膜にウイルスが付着して、感染する可能性が高まります。ちなみに、くしゃみは咳の約20倍のウイルスを飛散させるといわれています。
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接触感染

飛沫したウイルスが付着した物(たとえば電車やバスのつり革等)に触れ、ウイルスが付着した手で自分の目や鼻、口を触ることによって、粘膜からウイルスが感染します。
つり革からのウイルス付着
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空気感染

空気感染
飛沫から水分がなくなり、細かい粒子となって空気中に浮遊しているものを飛沫核といいます。 飛沫核に含まれるウイルスは、低温で湿度の低い状況では、長時間、感染性を保ち続けています。よって、そういった条件下の、狭くて気密性の高い空間に感染者と一緒にいると、空気感染を起こすことがあります。湿度管理だけではなく、定期的な換気も必要です。
 
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インフルエンザの予防

 
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うがいをする

うがい

<正しいうがいの方法>

うがい液を口に含み、口の中でグチュグチュして吐き出します。

もう一度、うがい液を口に含んで、今度は、上を向いて「オーッ」と声を出してから吐き出します。この時、母音(アイウエオ)を全て発声すると、喉の奥、隅々まで、うがい液が行き渡ります。

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手洗い

“3つの感染経路”でお話しました接触感染を防ぐためにも、手洗いは欠かせません。インフルエンザウイルスは、外側にエンベロープという膜をもっており、この膜が脂質性のため、石鹸等の界面活性剤が手に付着したウイルスを落としやすくします。
また、エタノール等のアルコールは、このエンベロープを破壊し感染性を失わせますので、手洗い後に、速乾性のアルコールスプレーを用いるとより効果は高まります。
外から帰宅した際、食事の前、トイレを使用した後には、必ず手を洗う習慣をつけましょう!

<正しい手洗いの方法>

手洗いの手順
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マスクの着用

マスクは、くしゃみや咳の飛沫が、周囲に飛散するのを防ぐ効果があります。インフルエンザに限らず、くしゃみや咳を伴う風邪等にかかったら、すすんでマスクを着用するようにしましょう。
その他、感染していない人が予防的にマスクをすることで、次のような効果があります。

  • ・飛沫の吸入を防ぐ
  • ・手で鼻や口に触れる機会が減る
  • ・自分の体温や呼気により、鼻やのどを乾燥や冷気から守る

<咳に関するエチケット>

おさえる・そむける
ティッシュなどで口や鼻を押さえ、他の人から顔をそむけて1メートル以上離れましょう。
すぐに捨てる
使用したティッシュはすぐにフタ付の専用のごみ箱に捨てましょう。
咳をしている人にマスクの着用をお願いする
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湿度の管理

湿度管理
空気が乾燥していると、のどの粘膜の防御機能が低下してインフルエンザに限らず、風邪をはじめとした呼吸器の感染症にかかりやすくなります。
もう一つ、インフルエンザウイルスは相対湿度50%で、生存率が急速に低下するという調査結果があります。ただし、湿度を高めてもしばらくは生存しているウイルスもあります。空気感染を防ぐためにも換気は必要です。
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睡眠

睡眠
“毎年流行するメカニズムを知る”で、免疫についてのお話をしましたが、体力をつけ免疫力を高めることは、インフルエンザの予防につながります。
睡眠は、脳を休め筋肉の緊張を一時的に止めて、体力を回復させると共に、ストレス等により傷んだ箇所を修復します。また夜間は免疫力を高めるホルモンの分泌がさかんに行われるため、質の高い睡眠がとれるように早寝早起きの習慣をつけましょう。最近は、睡眠の質と寿命には因果関係があるとの研究結果も発表されています。
ただし、休日の長時間の寝だめ等は、質のよい睡眠という点から、体にとっては逆効果のようです。
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栄養

体力回復や免疫力を高めるためには、栄養バランスのとれた食事に気を配る必要があります。肉や魚、豆類から良質のタンパク質を摂取して体力を回復させると共に、ビタミン類の補給も欠かせません。
    栄養バランス 代表的なビタミン
  • ・ビタミンA…気管等の粘膜形成、免疫の活性化に関係があります。
  • ・ビタミンB2…粘膜を正常に保つ働きがあります。
  • ・ビタミンB6…タンパク質、炭水化物、脂質といった三大栄養素を代謝
    し、肉体づくりには欠かせません。
  • ・ビタミンE…免疫を活性化させます。
  • ・ビタミンC…体内で異物と闘う白血球の働きに必要です。
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ワクチン接種

どのような感染症のワクチンも基本的な仕組みは同じです。抗原を接種して、それに見合った抗体を体内で作り出させ、感染を防止、または発病しても回復を早める働きがあり、不活化ワクチンと生ワクチンがあります。
・不活化ワクチン‥‥ 病原体そのものではなく、その抗原を接種するもので、インフルエンザの予防接種に使われるワクチンはA型とB型の抗原を混合した不活化ワクチンです。これにより体内で作られる抗体は、抗原との特異性が高い(ぴったりと合致している)ため、少しでも抗原が変化すると効果がなくなってしまいます。よって、毎年、世界保健機構の情報で、国内の流行状況等を検討して、その年に相応しいワクチンが作られています。
・生ワクチン‥‥ 毒性を弱めた病原体を使用し、通常の感染経路と同様の方法で接種(経口投与等)します。
アメリカでは鼻から生ワクチンをスプレーする方法が一部認可されており、不活化ワクチンに比べて、通常の感染経路と同じ場所で抗体がつくられるため、抗原との特異性が低く、少々、ウイルスの形が変化しても効果があると考えられています。
抗原と抗体

<ワクチンの接種時期>

接種後、効果が現れるまでに約2週間かかり、またその効果は約5ヵ月続くといわれています。 よって、12月下旬~3月上旬の流行期に備えて、12月上旬ごろに接種することが推奨されています。 また、免疫力の弱いお年弱りや子供などは2回接種するのが通常ですが、十分な免疫を長期間維持するためには、大人でも2回接種することが望ましいとされています。 また、最も強い免疫力を獲得するためには、1回目の接種後、4週間空けるのがベストとされています。
 
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