予防や治療法はあるの?

予防や治療法はあるの? その1

気になる「食事療法」

「原因となる食物を完全に摂取しない」ことのような極端な方法ではなく、最小限の除去に心がけること
が重要です。
食物除去の程度や方法、期間などは個人差がありますので、医師からの適切な指示(アドバイス)を受
ける必要があります。また、除去した食物を補うための栄養の摂り方も学ぶ必要があります。成長に伴
い、除去解除の程度を見極め、食物除去を徐々に減らしていきましょう!

☆ 食物除去ランクを減らすためのポイント ☆

乳幼児の食物アレルギーの中で、最も発生頻度が高いアレルゲンが卵です。以下に卵の
抗原性が強い順にランク分けしております。生の卵と加熱された卵を比べると比較にならな
いほどの差があります。
各段階で症状が出ないことを確認しながら、1ヵ月間様子を見て問題がなければ、その他
のランクにチャレンジしたりして、食べて問題ないレベルを維持していくことが重要です。焦
りは禁物です!

ランク 1 生  卵 ・・・ 生卵・マヨネーズ・アイス・メレンゲ
ランク 2 半 熟 卵 ・・・ オムレツ・丼物・温泉卵
ランク 3 卵の加熱物 ・・・ 卵焼き・茶わん蒸し・かき卵汁・お好み焼き
ランク 4 卵入りの料理 ・・・ ハンバーグ・とんかつ・天ぷら衣
ランク 5 卵入りお菓子 ・・・ カステラ・ワッフル・クッキー
ランク 6 つなぎに卵使用 ・・・ ちくわ・かまぼこ・ウインナー
ランク 7 鶏  肉 ・・・ 鶏肉・チキンコンソメ

※ 抗原性 ・・・ 食物が体内に入った時に異物として排除しようと過剰反応を起こす性質。

牛乳は、「たんぱく質」「カルシウム」を多く含んだ食品になります。除去した場合の成長過
程を心配する方も多いようですが、「たんぱく質」は肉・魚・卵・大豆などで摂れ、「カルシウ
ム」は小魚・海藻・豆腐などで摂れるため、これらの食品を上手く活用することが重要です。

乳製品には、牛乳そのものを使用している食品や牛乳を発酵させた食品、牛乳から脂肪な
どの成分だけを取り出した食品など、以下の表のように区分けすることができます。気づか
ずに口にしてしまうことが多い食品になるため、注意が必要です。

生牛乳 牛乳・練乳・コーヒー牛乳・生クリームなど
発酵食品 ヨーグルト・チーズ・乳酸菌飲料・バターなど
加熱料理 シチュー・グラタン・プリン・ハムなど
お菓子 ビスケット・ワッフル・クッキーなど
微量混入 乳糖・ハチミツ・メイプルシロップなど
牛肉・カモ・アイガモなど

小麦アレルギーの場合、炭水化物としての栄養素は「米」や「イモ」などで補うことができま
す。主食が米飯となるため、栄養面からはむしろ望ましい食事となります。
小麦は、パン・うどん・スパゲティ・中華麺などの麺類、お菓子、麩、調味料などさまざまな加
工食品に使用されています。小麦を使用していない代替食品として、麺類は春雨やビーフ
ン、揚げ物衣には小麦未使用のコーンフレークなど、うまく活用することを心掛けましょう。

小麦でアレルギーを起こす主なたんぱく質に“グルテン”があります。以下は、小麦粉の種
類によってグルテンの含有量を比較した表になります。

強力粉
中力粉
薄力粉
デュラムセモリナ
パン・ピザなど うどん・餃子の皮など お菓子・天ぷら粉など スパゲティ
パン・ピザなど
グルテン <多>
うどん・餃子の皮など
グルテン <中>
お菓子・天ぷら粉など
グルテン <小>
スパゲティ
グルテン <多>

そばアレルギーは、微量でもアナフィラキシーショックなど、重症になることがあるので注
意が必要です。子どもに初めてそばを食べさせる時は、少量を与えて最低20分は様子を
みることが必要です。(個人差があり、数時間たってからアレルギー反応を起こす場合も
あります。)
そばが含まれていないと思って食べたものに、そばが入っていたという落とし穴もあります。
例えば、饅頭系の和菓子にそば粉が含まれていたり、うどんを頼んだときにそばが混入
していたりと、知らない間に口にしてしまいアレルギー症状を起こしてしまいます。

★ 原材料を確認したほうがいいもの ★
饅頭系の和菓子 パンケーキ 蜂蜜(そばの花) 胡椒

大豆製品は、豆腐・味噌・醤油・納豆・油揚げなど身近で馴染み深い食材がたくさんあり、
除去するだけの考え方だと食生活の楽しさを見失います。少しでも楽しく、また十分な栄養
が摂取できる食生活が送れるように、代替食品を活用することも大切です。
枝豆(若い大豆)は、皮膚炎タイプの方が食べても症状が出ないことが多いといわれていま
す。また、大豆油に対しては反応が強く、豆腐では何の反応も出ないこともあり、一筋縄で
はいかないのが大豆アレルギーです。

抗原の強さ 大豆食品 代替食品
最強 大豆・枝豆・ナッツ・大豆油・ごま油など 白身魚・肉・菜種油
チョコレート・スナック菓子・マーガリンなど 煎餅・なたね・マーガリン
弱強 豆腐・豆乳・小豆・きなこ・インゲン豆など 芋ようかん
味噌・醤油・もやし・納豆など 大豆ノン味噌・醤油
>様々な大豆食品

ピーナッツアレルギーは、大豆や小麦、乳製品のアレルギーとは違い、そばアレルギーの
ように摂取したことが原因で、アナフィラキシー症状を起こしやすい怖いアレルギーです。

  • 油断禁物!
    ピーナッツは小児科医にとっては天敵のような食品で、子ども
    が食べたときに噛み砕いた一部が気管に入ると、油分が多く
    なかなか治らない肺炎を起こすことで有名のため、子どもに
    はピーナッツを与えないように指導されています。
  • お母さん注意!
    お母さんがピーナッツを食べると、2人に1人は母乳中にアレ
    ルゲンが分泌されるといわれています。また、妊娠中にピー
    ナッツをたくさん食べると、子どもがピーナッツアレルギーにな
    りやすくなります。
  • びっくり!ニュース
    カナダでピーナッツアレルギーの少女がピーナッツバターを食
    べた彼氏とキスした後、アナフィラキシーショックを発症し亡く
    なったという報道がありました。欧米では特に、ピーナッツに
    ついて恐れられています。

えび・かに・イカ・たこなどの甲殻軟体類が原因となるアレルギーは、2・3歳以降に増え始
め、成人では最も頻度の高いアレルゲンです。甲殻軟体類がアレルギーを起こす原因タン
パク質は「トロポミン」と考えられています。大部分は、摂取後1時間以内にじん麻しんや皮
膚の腫れといった皮膚症状が最も多くみられます。

  • えび
    えびの画像
     えびアレルギーの中でも、生えびを食べた時だけ、また、触れるだけで症状が出る人もいるので注意!
  • かに
    かにの画像
     嘔吐や腹痛などを起こす場合もあります。また、汁が付いた手で触れられるだけでも症状が出る場合も!
  • イカ
    イカの画像
     食物アレルギーのなかで発症率が高く、またショック症状を引き起こすことがあります!
  • たこ
    たこの画像
     発症頻度はイカほど高くはありませんが、じん麻しんや口の中が腫れるなどの症状が出る場合も!

予防や治療法はあるの? その2

「薬物療法」で症状をコントロール

薬物療法には予防維持薬(コントローラー)で疾患の増悪や発作を予防し、QOLを維持するために症状
をコントロールする方法と、対症救急薬(リリーバー)等で、急性症状を改善するものがあります。
※QOLとは、「生活の質」 quality of lifeの略。
  • 抗ヒスタミン薬
    ヒスタミンには血管拡張作用があり、その働きにより起こるアレルギー反応を抑制します。
    ≪ 服用方法 ≫ 内服、注射など
    抗ヒスタミン薬

  • ステロイド系抗炎症薬
    幅広い症状に効果がありますが、とくに皮膚における抗炎症作用や免疫抑制作用が期待できます。外用薬では強さにより5つにランク分けされており、症状に合わせて薬を選んでいきます。
    ≪ 服用方法 ≫ 内服、塗布による外用など
    ステロイド系抗炎症薬

  • インタール
    食物アレルギーを原因とするアトピー性皮膚炎を緩和させる働きがあり、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎などにも効果があります。
    ≪服用方法≫ 内服、吸入、点鼻など
    インタール

アナフィラキシー治療

ショック症状やぜんそく、呼吸困難など呼吸器系をはじめとする強い症状が出た場合には、速
やかに投薬を行います。一時的に症状の進行を緩和させる働きやショックを和らげます。

  • アドレナリン自己注射(エピペン)
    気管支を広げたり、心臓の働きを活発化して血圧を上昇させるなどの働きにより、ショック症状を改善させます。あくまで応急処置のため、たとえ注射後症状が治まったとしても、速やかに医師の診断を受けることが重要です。
    ≪ 服用方法 ≫ 太もも外側前部の筋肉に注射する
    アドレナリン自己注射(エピペン)

「減感作療法(抗原特異的免疫療法)」で過敏性を緩和させる

少量の抗原(アレルゲン)を徐々に増量しながら体内へ摂取させて過敏性を減少させる方法です。まだまだ正しく指導できる専門医が少ないため、安易に摂りいれず慎重に判断するべきですが、臨床結果は非常に良いため、今後期待できる治療法の一つです。
直接患部に塗布する外用薬をはじめ、内服薬などもあります。薬の効き方や副作用などは、本人の症状や体質により大きく変わりますので、医師と相談しながらの治療をおすすめします。

* 専門知識を持った医師に正確な診断をしてもらうことが最も大切です *